新市場展開向け精算機の開発 ~ スピード感を持った市場展開を目指して

新市場展開向け精算機の開発 ~ スピード感を持った市場展開を目指して

左:栗本 大地 / 右:齊藤 勇介

アルメックスの主力製品の一つである自動精算機。長年のノウハウを活かしつつも、新たな開発手法へチャレンジした新型モデルの開発担当者のお二人に当時のお話を伺いました。

齊藤 勇介
R&D本部 開発部 デバイス制御開発グループ
2006年新卒入社 
入社後システム推進課に配属され、大型精算機の開発やテスト、他社システムとのシステム連携の設計を経験
本プロジェクトではデバイス制御の開発兼プロジェクトリーダを担当


栗本 大地
R&D本部 開発部 ハード開発検証グループ
2016年新卒入社。 
入社後プロダクトデザイン課に配属され、レジャーホテル向けシステムや精算機画面のデザインカスタマイズを経験。
本プロジェクトUIデザインを担当。

新型精算機「FIT」(フィット)の開発スタート

齊藤)当社は長年、主にホテル、病院、ゴルフ場といった業界向けの大型自動精算機を開発・販売してきましたが、そのノウハウを活かして、幅広い業界で自動精算機をご利用いただくために、小規模な店舗でも導入可能なコンパクトな端末の開発を行うことになりました。
精算に必要な機能・デバイスを備えつつ、限られたスペースに設置できるよう「どんな市場にも”フィット”する」がコンセプトの新型精算機です。


お客さまごとの運用に沿って、市場にあったソフトウェアを搭載して販売展開していくことを目指しました。しかしながら、従来の開発手法では1つのアプリケーションで画面表示やデバイス制御を行っていたため、異なる仕様に対応するには非常に多くの時間がかかってしまいます。これから多業界に展開するうえでは、開発スピードが大きな課題となりました。

マイクロサービス化への挑戦と課題

齊藤)開発スピードの課題を解決するために、マイクロサービスアーキテクチャでの開発に着手しました。
具体的には、フロントエンド(UIデザイナー)とバックエンド(デバイス制御)、基幹システムとの連携コントローラーを分離させることで、変更・修正の対応がし易くなり開発スピードを向上させることができます。
しかし、開発を進めていく中で新たな課題も出てきました。


今までは1つのアプリケーション上でデバイス制御や画面表示などが完結していたため、ある程度自由に開発を進めることができましたが、それをマイクロサービス化させたことで、データ通信などの連携のタイミングがシビアになりました。
例えば、プロトタイプを作成していた時の話ですが、画面はお金を入れる画面を表示しているが、入出金デバイスはまだスタンバイできていない。結合してみると画面とデバイスの動きが一致していない。という経験がありました。
入出金デバイスは、入金許可の指示を受け取ってもすぐお金を入れられる状態になるわけではなく、各種センサーの状態を確認した後にお金を入れられる状態になります。その絶妙なタイミングをコントロールするのにはどうしたらいいか?という課題が出てきました。


これは入出金デバイスに限らず、プリンタやカードリーダなど他のデバイスでも発生する課題でした。
そのため、チームメンバーとの仕様確認のコミュニケーションに従来よりも時間をかける必要がありました。R&D本部は札幌にも拠点があり、札幌と東京のメンバーで開発を進めていましたが、距離が離れていることもあり、少しでもコミュニケーションの齟齬を減らそうと、私が札幌に出張してチームメンバーと設計しながら開発を進めることもありました。

栗本)開発当初は電話やメール、対面でのやり取りのみでしたが、新型コロナウイルスのパンデミックで全社的にリモートワークを推奨したことで、チャットツールやWeb会議システムが導入され、チームメンバーとのコミュニケーションが円滑に進むようになりました。

齊藤)今はすっかり当たり前になったチャットによるコミュニケーションに最初は戸惑いながらも、細やかなコミュニケーションがプロジェクトの成功を握っていると言っても過言ではありませんでしたので、プロジェクトメンバーの情報漏れを防ぐことに注力しました。その結果、札幌への長期出張の必要もなくなりました。


栗本)マイクロサービス化に合わせてUIデザインのツールも変更しました。従来はPhotoshopでデザインした後にパーツを切り出す作業を行っていましたが、画面をWEBベースにすることで、お客様ごとのカラーやテイストの変更だったり、配置の変更が容易になりました。また、チーム内やお客様への確認もURLの共有だけで容易かつ迅速に行うことができるようになりましたので、開発業務だけでなく、すべてにおいてスピードが向上したと感じています。

経験を活かして、さらなる市場展開へ

栗本)今回FITでマイクロサービス化を実現できたことで、異なる市場へスピード感を持って展開することができるようになりました。フロントエンド(UI)とバックエンド(デバイス制御)を分離したことで、市場ごとにUIを入れ替えるだけで導入することも可能です。


齊藤)現在は飲食店、温浴施設、カラオケ、動物病院に導入させていただいており、さらに色々な市場に展開できるようにブラッシュアップさせていきます。


栗本)多くの施設に導入が進み、生活圏でふと目にしたり、SNSで紹介されてたりするのを発見すると嬉しくなります。これから新しい市場への展開も想定されるので、さらに多くの方に利用してもらえることが楽しみです。